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後ろめたさ→すっきりの物語 読解プリント(物語文・約1000字×2本)

割った花びんをかくしていた話と、友だちをかばえなかった話の2本で、後ろめたさをかかえた主人公が、自分から打ち明けることで胸のつかえを下ろす物語文です。目をそらす、話題を変えるといった後ろめたさの表れ方にも注目しましょう。

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割った花びん

日曜日の昼、ぼくはろうかでボールをけっていた。外は雨で、公園に行けなかったのだ。家の中ではやめなさいと、何度も言われていたのに。強くけったボールがげた箱に当たり、上にあった青い花びんが落ちた。かわいた音がして、花びんはいくつにも割れた。

「健太けんた、今の音、何」

台所からお母さんが走ってきた。エプロンで手をふきながら、ろうかのかけらを見て目を丸くした。ぼくはボールを背中にかくしていた。

「窓から風が入って、落ちたみたい」

自分でもおどろくほど、すらすらと言葉が出た。お母さんは少しもうたがわずに、「けががなくてよかった」と言った。そして、かけらを一つずつ拾い、おかしの空き箱に入れた。その箱は、台所のたなの上に置かれた。

それから三日、ぼくはお母さんの顔をまっすぐ見られなかった。ごはんのときも、テレビのほうばかり見ていた。宿題をしていても、ゲームをしていても、あの割れる音が、何度も頭の中でひびいた。たなの上の箱が目に入るたびに、むねの中が重くなった。

三日目の夜、ぼくがおふろから出ると、お母さんが台所のテーブルで箱を開けていた。テーブルには、新聞紙が広げてあった。かけらをならべて、接着剤せっちゃくざいでつなごうとしている。

「やっぱり、むずかしいね。これ、おばあちゃんがくれた花びんなの」

お母さんは小さく笑った。そのとき、外で強い風がふいて、窓ががたがたと鳴った。その音が、ぼくのついたうそを、何度も言い返しているように聞こえた。

ぼくはパジャマのすそをにぎった。言わなければいけない。でも、言ったらしかられる。手のひらに、じっとりとあせがにじんだ。足がゆかにはりついたように動かなかった。

「お母さん」

声がかすれた。お母さんが顔を上げた。

「花びん、風じゃないんだ。ぼくがろうかでボールをけって、割った。うそついて、ごめんなさい」

言い終わると、目のおくが熱くなった。鼻のおくがつんとする。お母さんはしばらくだまっていたが、やがて接着剤のふたをしめた。

「話してくれてありがとう。うそは、もうなしね。約束よ」

「……うん」

「じゃあ、手伝って。健太のほうが、指が細いから」

ぼくはお母さんのとなりにすわって、小さなかけらをつまんだ。しかられなくてうれしいのに、なぜかなみだが止まらなかった。かけらを合わせるたびに、三日間むねにつかえていたものが、少しずつ軽くなっていった。最後のかけらがはまったとき、お母さんと目が合って、二人で少し笑った。

課題

  1. 気持ちの変化:はじめ(  )→ きっかけ(  )→ おわり(  )
  2. きっかけになった一文を書きぬこう。

友だちをかばえなかった

休み時間、由香ゆかが新しい筆箱を机の上に出した。花のもようの布でできていて、口のところに小さなボタンがついている。由香はボタンを外して、中からえんぴつを一本ずつ出してならべた。

「おばあちゃんがぬってくれたの。ボタンも、おばあちゃんがえらんだんだよ」

由香がそう言ったとき、後ろの席の女の子たちが、いすから身を乗り出してのぞきこんだ。

「なにそれ、赤ちゃんみたい」

何人かが声を立てて笑った。教室のあちこちから、くすくすという声が聞こえた。由香は筆箱を両手でつつんで、だまってしまった。

わたしは、そのすぐ横に立っていた。前の日、由香の家でその筆箱を見て、「かわいいね」と言ったばかりだった。おばあちゃんが一晩でぬってくれたのだと、由香は何度も話してくれた。何か言わなきゃ。そう思うのに、口が動かない。気がつくと、わたしもみんなに合わせて、口のはしだけで笑っていた。

由香が顔を上げて、わたしを見た。何かを待っているような目だった。わたしは、すぐに目をそらした。

それから二日、わたしは由香をさけていた。ろうかで会いそうになると、遠回りをした。授業中も、二つ前の席の由香のせなかが気になって、先生の話が少しも頭に入らなかった。いっしょに帰ろうとさそわれても、用事があると言ってことわった。

三日目の放課後、げた箱に行くと、由香が一人でくつをはきかえていた。朝からふっている雨の音が、げた箱の中にまでひびいていた。

わたしは手さげのひもを、ぎゅっとにぎりしめた。今言わなかったら、ずっと言えない気がした。こわかったけれど、わたしは一歩前に出た。

「由香」

由香の手が止まった。

「おととい、何も言えなくて、ごめん。いっしょに笑って、ごめん。わたし、あの筆箱、本当にかわいいと思ってる」

言いながら、顔が熱くなった。なみだがこぼれないように、くちびるをかんだ。由香はくつのかかとを指でおさえたまま、しばらく下を向いていた。

「……美咲みさきだけは、何か言ってくれると思ってた」

「うん」

「でも、言いに来てくれたから、もういい」

由香はランドセルから花もようの筆箱を出して、わたしに見せた。わたしはそれを受け取って、小さなボタンを指でなぞった。笑いたいのに、なぜか泣きそうになった。二人で校門を出ると、雨はいつのまにか上がっていて、水たまりに青い空がうつっていた。わたしたちは、ならんで水たまりをよけながら歩いた。

課題

  1. 気持ちの変化:はじめ(  )→ きっかけ(  )→ おわり(  )
  2. きっかけになった一文を書きぬこう。

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