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反発→理解の物語 読解プリント(物語文・約1000字×2本)

母の小言と弁当、厳しいコーチの2本で、大人に反発していた主人公が、ある出来事をきっかけに相手の思いに気づく物語文です。反発しているときと理解したあとで、主人公の言葉や行動がどう変わるかに注目しましょう。

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母の小言と弁当

「拓也たくや、ハンカチは持ったの。水とうは。しおりは」

遠足の朝、台所でパンをかじっていると、母の声が後ろから追いかけてきた。ぼくは返事をしないで、牛乳を一気に飲んだ。テーブルの上には、母が書いた持ち物のメモまで置いてある。

「返事くらいしなさい。それに、ねぐせがついてるよ」

「わかってるって。毎朝、同じことばっかり言わないでよ」

ぼくはコップを流しに音を立てて置いた。五年生にもなって、忘れ物の確認をされるのはうんざりだった。流しには油の入ったなべと皿が重なっていたけれど、ぼくはろくに見もしなかった。

「はい、お弁当。かたむけないでね」

母が包みを差し出した。ぼくは中も見ずにリュックにつっこみ、「行ってきます」も言わずに玄関げんかんのドアを閉めた。外に出ても、母の声がまだ耳の中で鳴っている気がして、ぼくはわざと大きな足音を立てて歩いた。

昼になって、ぼくたちは丘おかの上でシートを広げた。リュックの底から弁当を取り出すと、包みが少しななめになっていた。ぼくはあわてて結び目をほどき、ふたを開けた。

からあげが四つ、すみに寄っていた。その横には、ぼくの好きなあまい卵焼きもある。ミニトマトは、へたがきちんと取ってあった。

「拓也の弁当、うまそうだな」

となりの友だちがのぞきこんだ。ぼくは「まあね」とだけ答えて、からあげを一つ口に入れた。冷めた衣から、しょうゆとしょうがのにおいがした。

きのうの夜、テレビを見ながら「からあげ食べたいな」とつぶやいたのを、ぼくは思い出した。母は洗い物をしながら、あれを聞いていたのだ。そういえば、今朝はまだ暗いうちから、台所で油のはねる音がしていた。ぼくはふとんの中でそれを聞きながら、またねむってしまったのだった。

ぼくははしを持ったまま、しばらく動けなかった。あんなふうに言い返したことが、急に胸にささった。それなのに、からあげはうまい。申し訳わけないのに、口のはしがゆるんでしまう。

そのとき、雲の切れ間から日がさして、弁当箱のふたがきらりと光った。丘をわたる風が、ほおにすずしかった。さっきまで重かった胸の中を、その風が通りぬけていくようだった。

ぼくは残りのからあげを、一つずつゆっくり食べた。卵焼きも、はしっこまできれいに食べた。帰ったら、まず「からあげ、うまかった」と言おう。それから、朝のことをあやまろう。

課題

  1. 気持ちの変化:はじめ(  )→ きっかけ(  )→ おわり(  )
  2. きっかけになった一文を書きぬこう。

厳しいコーチ

「遥はるか、足が止まってる。もう一本」

森もりコーチの声が、体育館にひびいた。ほかの子がシュートを外しても何も言わないのに、遥にだけは、いつも注意が飛んでくる。六年生の遥は返事をせずに、列の後ろにもどった。ボールをにぎる手に、ぎゅっと力が入った。

「左。また右に逃にげたぞ」

二回目の注意で、遥はボールを床ゆかに強くついた。となりの子が、ちらりとこちらを見た。遥はコーチのほうを見ないようにして、次の順番を待った。どうして自分ばかりなのか、さっぱりわからなかった。

練習の終わりに、コーチは笛を首から外しながら言った。

「遥は残れ。左手のドリブル、あと十分」

みんながくつをはきかえて帰っていく。くつ箱のほうから笑い声が聞こえて、遥は口をとがらせた。きのうも、おとといも残された。もう、バスケットをやめてしまいたいくらいだった。

だれもいない体育館は、しんとしていた。遥のつくボールの音だけが、やけに大きくひびいて、かべからはね返ってくる。高い窓から入る光も、もううすくなっていた。

「もっと低く。目は前だ」

「……コーチは、わたしのことがきらいなんですか」

口に出してから、遥はしまったと思った。ボールが手からはなれて、コートのすみに転がっていった。コーチは何も言わずに、ボールを拾いに行った。そのとき、ベンチのノートが床に落ちた。遥が拾うと、開いたページに自分の名前があった。

日づけの横に「左手、十回」「十五回」「顔が上がってきた」と、細かい字がならんでいる。ページをめくっても、遥の名前は三か月前から一日も欠けていなかった。ほかの子の名前もあったが、遥のところがいちばん長かった。

「右手なら、遥はだれにも負けない。止められるのは、いつも左に追いこまれたときだ。そこさえ直れば、もっと上に行ける」

コーチはボールを遥にわたして、ぼそりと言った。それから、少しこまったように頭をかいた。

遥はノートを両手で持ったまま、うつむいた。顔が熱くなった。あんなことを言ってしまって、はずかしい。それなのに、胸のおくがあたたかくて、口もとがゆるみそうになる。

「……もう一回、お願いします」

遥はノートをベンチにもどし、ボールを受け取った。左手でつくと、ボールはさっきより少しまっすぐ、遥の手にもどってきた。一回、二回、三回。遥は顔を上げて、コーチの立っているほうを見た。

課題

  1. 気持ちの変化:はじめ(  )→ きっかけ(  )→ おわり(  )
  2. きっかけになった一文を書きぬこう。

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