「誇らしさ」「後ろめたさ」「気おくれ」など、物語文の答えに使う気持ちの言葉35語を、1本に1つずつ主役にした読解プリントです。約1000字の物語35本(無料PDF)で、行動や景色の手がかりから気持ちを言葉で言えるようにします。
PDFはA4横・縦書き(71枚・1.4MB)。先頭に目次があり、各本文は新しい紙から始まって、すぐあとに課題欄がつきます。見出しは題材の名前だけで、答えになる気持ちの言葉は書いていません。
物語文の記述や選択肢では、「うれしい」「悲しい」だけでは答えになりません。うれしいにも誇らしさ・安心・照れ・満足があり、悲しいにもくやしさ・後悔・切なさ・むなしさがあります。入試では、この細かい言葉で言い分けられるかが問われます。
このプリントの物語は、気持ちの言葉1つにつき1本です。主役の気持ちが本文に言葉として一度だけ出てくる話と、行動・表情・景色だけで示して言葉では書かない話が、半分ずつあります。言葉が出てこない話では、手がかりを集めて、自分でその気持ちに名前をつけます。
子どもに教える一言
「主人公は、最初の気持ちのまま終わらない」。この35本も、気持ちA → きっかけ → 気持ちB の形でできています。主役の気持ちが、はじめにあるのか、おわりにあるのかを見分けましょう。
束の中の1本を、そのまま横書きで載せています。PDFでは縦書きで、本文のすぐあとに課題欄(マス目や線)がつきます。
ぼくの家のげんかんの上には、古いツバメの巣がある。ぼくが生まれる前から、春になると、ツバメが毎年この巣にもどってくるのだ。
ところが今年は、四月の半ばをすぎても、ツバメは来なかった。ぼくは毎朝、学校へ行く前に巣を見上げた。巣はからっぽのままで、ふちのどろが少しくずれかけていた。
「今年は、ほかの場所に決めたのかもしれないね」
母がそう言ったのは、五月の連休が終わった日の夕方だった。
「……まだ、わからないよ」
ぼくはそう答えたけれど、声はだんだん小さくなった。去年は、巣の下に新聞紙をしいて、ひなのふんを受けた。五羽のひなが黄色い口を大きく開けて、親鳥にえさをねだっていた。巣立ちの日には、五羽そろって電線にならび、ぼくの方を見下ろしていた。
学校でも、ぼくは休み時間のたびに、まどから空を見た。ツバメににた鳥が飛ぶと、つい目で追ってしまう。けれども、よく見ると、どれもスズメかカラスだった。
その夜、ぼくは去年とった写真を見返した。巣のふちに、ひながぎょうぎよくならんでいる。ぼくはがっかりして、写真をつくえの引き出しにしまった。雨の音が、いつまでも屋根を打っていた。
次の朝は、雨が上がっていた。ぼくはもう、巣を見上げないことにした。くつをはいて、げんかんの戸を開けたときだった。
頭の上で、チュピ、チュピ、と高い声がした。
ぼくは、その場で動けなくなった。そっと見上げると、巣のふちに、黒いせなかの鳥がとまっていた。白いおなかに、長くわかれたしっぽ。もう一羽が、ぼくの頭のすぐ上を、すっとかすめていった。
「お母さん、来た。ツバメが来たよ」
ぼくは家の中に向かってさけんだ。自分でもおどろくほど、声がはずんでいた。母がエプロンのまま、げんかんに出てきた。
「あら、本当。ずいぶんおそかったね。遠くから、がんばって飛んできたのね」
ツバメは、くちばしにどろをくわえて、くずれかけた巣のふちに何度もぬりつけている。古い巣を、直しているのだ。その様子を見ているうちに、体のおくから喜びがこみ上げてきた。ぼくは思わず、その場でとびはねた。
それなのに、鼻のおくがつんとした。ゆうべ、もう来ないとあきらめかけた自分が、少しはずかしかった。
「ほら、航、ちこくするよ」
母にかたをたたかれて、ぼくは走り出した。角を曲がる前にふり返ると、朝の光の中で、二羽のツバメが巣のまわりを回っていた。ぼくは学校まで、一度も止まらずに走った。
課題
数字は字数。
| 回 | 題材 | 字数 |
|---|---|---|
| 1 | ツバメの巣 | 996 |
| 2 | パン屋の土曜日 | 1018 |
| 3 | 子どもみこし | 997 |
| 4 | 初めての昼の放送 | 965 |
| 5 | ぬれた図かん | 1041 |
| 6 | 書き初めの一枚 | 1050 |
| 7 | おすすめカード | 977 |
| 8 | いとこの帰った日 | 1022 |
| 9 | 公園の花だん | 976 |
| 10 | 近所の黒い犬 | 1028 |
| 11 | 病室のプリン | 986 |
| 12 | ゆっくりの山道 | 1062 |
| 13 | 夏祭りの夜 | 996 |
| 14 | しょうぎ大会 | 985 |
| 15 | いとこのとまり | 987 |
| 16 | 一年生と山登り | 964 |
| 17 | 夕立のバス停 | 987 |
| 18 | 大太鼓のばち | 1049 |
| 19 | 雪の朝の道 | 1021 |
| 20 | うさぎの水 | 949 |
| 21 | 子犬と弟 | 979 |
| 22 | こげたハンバーグ | 1043 |
| 23 | 八百屋の声 | 1013 |
| 24 | 桜の木の線 | 1066 |
| 25 | 母の日のオムライス | 963 |
| 26 | 貝がらのびん | 990 |
| 27 | 行けなかった夏祭り | 970 |
| 28 | 選手コースの初日 | 973 |
| 29 | 老犬との散歩 | 1046 |
| 30 | 書道教室 | 993 |
| 31 | 図書だより | 994 |
| 32 | 一人で乗りかえ | 971 |
| 33 | 本にはさんだ手紙 | 1061 |
| 34 | 流れ星の夜 | 1007 |
| 35 | 二十五メートル | 988 |
デルバトのプリントは無料で印刷・配布できます。本文はすべてこのプリントのために書いたオリジナルの文章です。設問は順に追加します。